【検証データ配布】マルチタイムフレーム分析を盲信するな【結論:手法によっては無駄】

マルチタイムフレーム分析とは

マルチタイムフレーム分析(MTF分析)とは、基準となる時間足よりも上位足、下位足のチャートを見ることで、相場環境を総合的に判断し、より勝率の高いエントリーポイントを絞るものです。多くの方が上位足でのトレンドに逆らわずに下位足でタイミングを計りエントリーすることを大正義のように語られています。

上位の大きな波に逆らわず下位の足で同方向にエントリーすることによって勝率が上がると言われれば、確かにそのように感じるのも分かりますし、その納得感ゆえに真実かのように語る人が多いのでしょう。

ただしそれはトレード手法次第であり、殊デイトレードで損失許容額が1日の平均変動値幅以下のものに限って言えば期待するような効果はありません。むしろ損失を増やし破産する可能性すら高めることもあるのです。(※後述しますが、MTF分析が全くの無意味ということではありません。)FXにおいて誰かが当然のように語るトレード手法に誤りがあることは多々ありますので、本当に効果的なものであるのかは自分の目で実際のチャートをベースに検証してみましょう。

手法は盲信せずに、本当に効果的なものであるのかを自分で検証しましょう。

マルチタイムフレーム分析が盲信されている主な要因

「ダウ理論の誤認」が主な要因だと考えています。ダウ理論とは相場の大原則と言われているもので、現在の相場の状態の定義付けを行ったものです。多くの方は「ダウ理論における上昇トレンド、下降トレンドが確定すれば、明らかな転換シグナルが発生しない限りトレンドは継続する」という説明を受けて、「ダウ理論上の上昇トレンド、下降トレンドが確定すれば、まぁトレンドが継続することが多いのかな?」といった印象を持たれたのではないでしょうか。

実はそんなことはありません。「明らかな転換シグナルが発生しない限り」という言い回しから、あたかもトレンド確定後の値動きが継続するように感じているだけなんですよね。よく読んで頂ければわかるかと思うのですが、「明らかな転換シグナル」とは直近高値に対する押し目を下方向にブレイク、または直近安値に対する戻り高値を上方向にブレイクすることであり、シンプルに言い換えると「レートが下がらなければ上昇トレンド、レートが上がらなければ下降トレンド」という至極当然のことしか言っていません。

「押し目で買っても、戻り高値で売っても負ける!ダウ理論は役に立たない!」と言っている方は、そもそもダウ理論の認識が間違っているんです。

ダウ理論では、トレンドが確定したからといってトレンドが継続する可能性が高いとは一言も言っていない。※勘違いしている人が非常に多いポイント

実際のチャートで検証してみよう

では実際のチャートでマルチタイムフレーム分析の有効性を検証してみましょう。日足で明らかな上昇トレンド、下降トレンドが発生している部分を抜き出し、陽線と陰線の割合とその値動きの幅を出してみようと思います。マルチタイムフレーム分析の有効性が高いのであれば明らかな偏りがあるはずです。
マルチタイムフレーム分析の有効性が高いのであればトレンド発生時の陽線と陰線の頻度とその値幅に明らかな偏りがあるはず。

今回の検証で使用する上昇トレンド(USDJPY 日足 期間:2018/3/26~2018/10/3)

今回の検証で使用する下降トレンド(USDJPY 日足 期間:2016/2/1~2016/6/27)

検証結果

上昇トレンド(USDJPY 期間:2018/3/26~2018/10/3)での検証結果

個数 平均値幅(Pips) 連続数
陰線 132 104.3 1.9
陽線 143 84.6 2.1

下降トレンド(USDJPY 期間:2016/2/1~2016/6/27)での検証結果

個数 平均値幅(Pips) 連続数
陰線 55 146.6 2.0
陽線 51 108.0 1.9

陰線と陽線の回数と連続数に然程大きな開きが無いことが分かりました。値幅も下降トレンドでは陰線の方が大きかったものの、上昇トレンドでは陽線よりも陰線の値幅の方が大きいという結果となっており、明らかな偏りは見られませんでした。つまりデイトレードで平均値幅以下の損失許容額である取引手法の場合は、日足の流れで下位足のエントリーポイントをフィルタリングする形でのMTF分析に高い有効性は無いということです。(※冗長になるため省いていますが他の通貨ペア、期間で検証しても多少の差はあれ大きな偏りはありませんでした。また、押し目買い、戻り売りでエントリーすることを前提にしていますので、局所的に完全に一方向に伸びているような場所は検証する意味が無いため対象外としています。)

むしろ上位足のトレンド方向にエントリーすることで、損失が想定以上に出てしまったとしても、「トレンド方向にエントリーしているのだから、もう少し待てば利益がでるはず」といった甘い認識で損切りできずにポジションを持ち続けてしまう人もいるのではないでしょうか。上位足と同じ方向にエントリーすることにより、勝率を高めるどころか損失を膨らませる可能性さえあるのでMTF分析の取り扱いには注意しましょう。

日足の平均値幅以下の損失許容額であるデイトレード手法の場合、日足のトレンド方向で下位足のエントリーポイントをフィルタリングしても意味はない。

効果的なMTF分析の方法について

先の検証で、上位足のトレンド方向で下位足のエントリーポイントをフィルタリングする有効性がほぼ無いことが分かりましたが、MTF分析に意味が無いかといえばそうではありません。MTF分析で重要視すべきなのは「上位足のトレンド方向」よりも「過去に意識されていたレジスタンス、サポートライン」なんです。大きな流れで意識されているレジスタンス、サポートラインは下位足でも機能しますし、大きな時間軸でないと見つけにくいレジスタンス、サポートラインがあるからです。

まずは現在のレート付近のレジスタンス、サポートラインを引き意識しておきましょう。ダウ理論で重要視すべきポイントは、皆が必死に学ぶトレンドの定義や目線の切り替えのタイミングではなく「レジスタンスとサポートのライン」にあるんです。値動きを予測することではなく「値動きの転換点を見つけること」がFXで勝つための条件ですよ。

効果的なMTF分析とは、上位足のトレンドに乗ることではなく現在のレート付近にあるレジスタンス、サポートラインを洗い出すことにある。

まとめ

①足の平均値幅以下の損失許容額であるデイトレード手法の場合、日足のトレンド方向で下位足のエントリーポイントをフィルタリングしても意味はない。
②効果的なMTF分析とは、上位足のトレンドに乗ることではなく現在のレート付近にあるレジスタンス、サポートラインを洗い出すことにある。
今回の検証結果のEXCELファイルをこちらからダウンロードできるようにしておきますので、興味がある方はご活用下さい。
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